民主共和国臨時政府執務室

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「神聖ソヴィエト帝国」の実態とその変容について 〜『エリヤの黙示録』に描かれた千年王国〜






ぽくね?すげえそれっぽいタイトルができた。今年のタイトル賞はこの記事で間違いない。やったね。












①これは何についての記事なのか


ここまでの文字の羅列からぼくがこれから何を書こうとしているかを理解できる人がいるならそれはそれでドン引きする。普通なら「遂におくすりに手を染めたのか」と思うだろう。ぼくもそう思う。Я тоже.





これは、DAU. プロジェクトの映画「DAU. ナターシャ」および「DAU. 退行」の「レビュー」である。これらこの世の終わりみたいな映画2本をすべて観た後にこの記事を書いてぼくの思いの丈をぶつけている。一応ネタバレというかなんというかが含まれているので目立つ箇所からは秘匿しておくべきだろうという判断をしたためだ。念のためである。





この「映画」はすごい。思わずブログを書き始めてしまうほどである。それほどすごい「映画」である。









②それは何なのか


この「映画」、ぼくはいわゆる映画館でペプシを飲みホットドッグ片手に観た映像なので一応「映画」と呼ばれるべきものであるらしい。ベルリンだかどこだかの「映画」コンクールにも出たとかなんとか。








簡単に概要をお教えしよう。
DAU. プロジェクト。それは、Ilya Khrzhanovskiy率いる狂気じみた実験である。ウクライナ東部、ナチと赤軍が死闘を繰り広げた街ハリコフ侵略者プーチンから全世界の自由民を防衛する最前線の英雄都市ハルキウ(2022/6/22訂正。Слава Україні!)の外れにクソデカ撮影セットをこしらえ、同市の住民の実に7人に1人を動員するとかいうまさに人を畑から採ってくるような壮大な社会実験である。そのクソデカ撮影セット内に「研究所」を作り、実際の科学者を世界中からかき集め地元の人間を「研究所」の食堂のウェイトレスとし(当然ながら科学者もウェイトレスも演技は素人である。素人「のはず」である)、そこに何年もの間缶詰にしてカメラを24時間回し続けた、とのこと。狂気の監視社会である。




その監視社会の間に撮られた映像のトッテダシである。それが、DAU. シリーズの「映画」である。







いや、これは「映画」などではない。現実である。



③どのような内容なのか





至極簡単である。

三語で「エロ・グロ・ナンセンス」。






中年女と女が朝からウォッカを呷り掴み合いの喧嘩をする。その中年女が汚ねえ中年ガイジン(ソ連から見た「ガイジン」である)とまともな言語コミュニケーションを取れないままセックスする。KGBがその中年女をひん剥いてぶん殴る。

あるいは、そのKGBが意味不明な宗教儀式を視察する。KGBとネオナチとが仲良くなる。ネオナチがガイジンをぶん殴る。幕間にネオナチと女がセックス。最後にネオナチが生きている豚に六芒星を描いて首を切り落とし、KGBの指示でネオナチが全員ぶっ殺す。全員ウォッカを飲んでいる。












絶望的である。愉快なほど絶望的である。これしかないのだ。計8時間くらいかけてぼくの視聴覚が入手した情報がこれだけである。味覚情報はホットドッグ2本とペプシLサイズがふたつ。同じくらいの時間でもまだあさま山荘事件の中継のほうが情報量が多い。カップラーメンたべたい。







ともかく、情報はこれしかない。ストーリーと呼べる物は一切ない。面白くないのである。







残念ながら現実である。現実にストーリーなど存在しないのだから面白くないに決まっている。











④それは一体何だったのか










この現実に対する唯一の希望があるとすれば、第四の壁の「こちら側」にいるぼくらにとっては、この映像に終了の時点が存在するというメタ的な事実のみである。










しかしこの第四の壁の「向こう側」の人、つまりは鉄のカーテンの向こう側の人にとってすればマジでたまったものではない。




ぼくらにとっては、この現実も所詮スクリーンの中の出来事だ。2本合わせても8時間くらいぼーっと座ってりゃ勝手に幕が下りてくれる。動かなくなりつつある脚を動かし始める映画館ならではの快感に身を震わせつつ、木枯らしに縮こまりながら帰路に着き、酒を呑みながら「つまんねー」だの「カネ返せ」だのと喚き散らしながらレビューサイトにバカみたいに星1をつけてりゃいいだけの話である。


「向こう側」の人にそんな悠長なことを言っていられる暇などない。ソビエトロシアでは8時間の間に480分がぼーっとお前の上に座る!そしてレビューサイトに星1なんぞ付けたらどこからともなく秘密警察がやってきて、木枯らしどころかマジで木を全部枯らしてくるレベルでクソ寒いところでカネも貰えず木を切る仕事に就く。誰が周りで見てるかわからない。余りにも辛すぎる。忘れたいのでウォッカを呷る。殴り合う。

これが一生続くのだ。一生。重たい言葉である。このクソみたいな生活のまま死んでいくのである。











ソヴィエトはちょうど今から30年ほど前に散り散りに崩壊したが、その前に70年ほど存在し続けていた。人の一生か、当時としては少し長いくらいだろう。明日も明後日も、来週も来年も、死ぬまでこのままである。




劇中で中年女が泣いていた。なんて言ってたかは最早覚えてないが「いつまで続くの」とかなんとかだった気がする。








死ぬまで。この「おもしろくなさ」は死ぬまで続く。















⑤おわりに



この映画に限った話ではないが、映画にしろ本にしろレビューに「よくわかりませんでした」とか書くなって話な訳だ。少しは考えろとも言いたいが、考えるだけの脳が足りてないからそういうレビューを書くのだとも言える。かなしいね。別にいいんだけどさ。





タイトルについて。少なくとも、「神聖ローマ帝国」とかいう詐欺師集団よりはマシだと思う。「神聖」だし「ソヴィエト」だし「帝国」だもの。いや、マシだね。Слава Православной Советский Союз!(正教のソ連に栄光あれ!)

おしり。